保育園をはじめとする保育施設で活躍している保育士さんたち。厚生労働省の調査によると、公立保育園で働く保育士さんのうち、正社員が約46.5%に対して、契約社員やパート・アルバイト、派遣といった非正規社員が約53.5%(臨時職員なども含む)、私立保育園では正社員が約61.1%、非正規社員が約38.9%、全体平均は約54.4%が正社員の正規雇用、45.6%が非正規社員雇用という結果がでました。近年は非正規社員の割合が高まっていると言われています。
※参考:厚生労働省『保育士等に関する関係資料』
公立と私立で比率分布が異なりますが、正規職員と非正規職員はだいたい半々といったところでしょうか。保育士資格という国家資格を活かす仕事という点では同じですが、正社員・パートの雇用形態によってそれぞれ良い面があるから、保育士のみなさんは働き分けていらっしゃることと思います。正社員とパートでは、働き方にどんな違いがあるのか。それぞれのメリットとデメリットを説明してきます。
保育士における正社員とパートの違い
保育園での雇用形態
当然ながら雇用形態が異なっています。一般的に「正社員」とは、雇用期間に定めのない労働契約であるのに対して、「パート」や「アルバイト」は雇用期間があらかじめ決められた契約になります。正社員は、雇用主側にとって正当な理由がないと解雇されないのに対し、パートは契約更新時に雇用契約を解消される場合があります。保育士さん自身が描く将来像やその時々の家庭環境、家族構成などによっても選択肢は変わってきます。また、仕事を続ける中で待遇やお休みに対する要望が変わってくることもありますから、その場合は雇用形態の変更を含めて、ぜひほいともにご相談ください。
保育園での待遇や福利厚生の違い
残業手当や夜勤がある場合は深夜業務手当など、共通して支給される手当はありますが、正社員の保育士さんに対する待遇がより厚いのが一般的です。雇用保険や労災保険といった社会保険を用意している保育施設であれば、正社員はすべての社会保険を受けることができます。正社員は昇格が早く、役職手当が付きやすく給与の面でも有利になることもあります。
その他
同じお子さんを預かるという点では変わりませんが「正社員は非正規社員に比べて責任が重い」という風潮はあります。たしかに担任を任されると、ますます仕事を休むわけにはいきませんので、体調管理にはより一層気をつけようという意識になるはずです。また、担任は正規雇用の職員という園が多いため、週案や月案の作成や事務仕事も正社員の仕事内容の一部となります。さらに、リーダーや主任、園長といった役職についても正規雇用の職員に任せられることがほとんどです。
保育士における正社員のメリット
非正規社員として働く方も多い保育士ですが、正社員として働くことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
安定した雇用と待遇
正社員最大のメリットは何よりも雇用が安定していること。パートであれば労働契約期間の終了とともに仕事が無くなることもありますが、正社員であれば定年以外の雇用期間の制限がありません。雇用が安定していれば安定した収入が見込めますよね。また住宅補助やボーナス、臨時の決算賞与などは、正社員に対して支給されることが多いため、実質的な労働時間以上の待遇を受けることができます。
経験年数、スキルアップによる昇格・昇給が優遇されやすい
雇用形態に関わらず、保育士としての経験年数が増えればできることが増え、スキルが上がっていきますが、それに合わせて昇格・昇給といった面で優遇されるのが正社員です。正社員は、同じ施設で働き続けることを前提としています。より長く勤めるスタッフに、より責任のある仕事を任せたい、より多くの給料を支払いたいというのが雇用主側の思いです。保育士としてのキャリアアップを考えている方にぴったりな働き方です。
重要な仕事を任せてもらいやすい
上記のように、正社員は掃除などの雑用以外にも責任のある仕事を任せてもらいやすくなります。最初は重荷に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、重要な仕事をいち早く取り組めることは、保育士キャリアの中で大きなアドバンテージになります。重要な仕事をやり遂げられるようになったり、保護者への対応や後輩を育てたりと、保育以外の業務でもやりがいを感じることができる瞬間が多々訪れることでしょう。
正社員でも働き方が多様化している
保育園側の人材確保のために、国は「短時間正社員制度」の導入を支援しています。主な目的は、子育てを目的に保育士の仕事を離れた方々の再就職を促すものです。普通の休憩時間と別に、育児のために休憩時間をとれる「育児時間」といった制度もあります。「正社員=常勤」といった固定概念にとらわれず、より多くの方に正社員として保育士を続けてもらうことができるよう社会も変化を見せています。
非正規雇用のメリット
正社員のメリットを多くご説明しましたが、派遣やパート・アルバイトでの働き方にもメリットはあるのでしょうか。
希望条件を通しやすい
パート・アルバイトなどの保育士は幅広い就業形態に対応しています。午前のみ・午後のみ・夕方〇時までといった「時短勤務」をはじめ、家族の扶養枠内の収入を上限に出勤日数・時間を調整する、週〇日だけ・土日だけ・夜間だけ働く、など、希望を受け入れる園で働くといった職場の探し方ができます。
正社員でも時短制度が浸透してきたり育休が取りやすくなったりと、少しずつ新しい働き方の動きが出てきましたが、まだパート勤務の方が希望の就業条件を通しやすい傾向があるといえるでしょう。
応募から就業に繋がりやすい
正社員採用の場合は、保育園側もずっと働いてもらうことを前提とするため、どうしても採用条件が厳しくなります。過去の就業経験だけでなく、応募書類の書き方や面接での話し方などから「どんな人なのか」を知るために、より厳しく見られます。一方パートの採用時は、保育園側が今足りていない人手を埋めることを主な目的に募集しています。過去の保育士としての経験や、いつ、何時間、何曜日働けるのか、など希望の就業条件をメインに見られますので、条件さえ合えば応募から就業に繋がりやすい、といえます。パートは選考が少なかったり、緊急性が高いため応募から採用までのスピード感も速いです。
慢性的な保育士不足の背景から、国はより多くの保育士さんに正社員として働いてもらえるよう施策を講じています。いまは「働きやすさ」の観点から、約半数の保育士さんがパート勤務を選んでいますが、将来的には正社員でもパートと同じくらい柔軟な勤務形態がとれるような時代が来るかもしれません。みなさんも新しい職場を探されるときは、求人サイトや保育園の募集ページで求人情報を収集されると思います。園児である子どもたちとの関わり方だけでなく、自分の都合や家庭の事情を考慮した上で、月給や時給だけで判断するのではなく、雇用の内容をよくチェックした上で求人に応募されることをおすすめします。
今回は保育士の正社員・派遣・パート・アルバイトといった正規・非正規雇用の違いをご紹介してきましたが、みなさんのご希望やライフスタイルにとってメリットが多い働き方を選んでください。
■監修/新谷ますみ
保育園運営本部で勤務。短大の幼児教育学科を卒業し、保育士・幼稚園教諭資格を取得。結婚後も仕事を続け、出産を機に一度退職。子育てがひと段落して、職場復帰。大切にしている言葉は「失敗しても、じっくり待つ」。
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