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2021.11.24

転職コラム

公立保育所と私立保育園。保育士として働くならどっち?

公立保育所と私立保育園、働くとしたらどっちがいいの?

大阪市立・神戸市立などの公立保育所と、社会福祉法人や株式会社が運営する私立保育園。「どっちがオススメですか?」とよく聞かれるんですが、単純に「こっち」とは答えられません。公立には公立の良さがあり、デメリットもある。私立には私立の魅力があり、弱点もある。今回はそのあたりを包み隠さずお話ししますので、ぜひ就職先・転職先選びの参考に!

例えば大阪市立の保育所で働きたい場合は、保育士資格を取得(新卒の場合は取得見込みでOK)した上で、大阪市の公務員試験に合格しないといけません。言い換えると、いま大阪市立の保育所で働いている保育士全員が大阪市の職員(地方公務員)ということです。ちなみにこれは保育所ではありませんが、国立大学の附属幼稚園で働く場合は幼稚園教諭免許を取得した上で、国家公務員の試験に合格する必要があります。では、保育士試験と公務員試験の違いは何か。大学や短大の保育科を卒業すれば保育士資格がついてきますが、自力で資格取得を目指す場合は保育士試験(国家試験)を受験します。試験には筆記と実技がありますが、もちろんいずれも「保育に関する内容」。それに対し保育士公務員試験では面接試験や専門試験の前に、適性検査(筆記)の中で言語的理解力、数的処理力なども問われます。つまり国語や数学の問題が出ますから、その勉強がけっこう大変という声もよく聞きますね。例えば大阪市の試験には、大卒程度を対象とする「保育士A」、短大卒程度対象の「保育士B」があります。令和2年度の試験では、保育士Aが受験者111人で合格者31人。保育士Bが受験者136人で合格者57人。なかなかの「狭き門」ですね。でもこれに落ちたからといって「もう保育士失格」というわけではありません。翌年に再受験することもできますし、「社会人経験者保育士」という中途採用枠もありますので、私立で保育士経験を積んでから挑戦という手もあります。
地方公務員ですから、まず地位が安定しています。勤続年数に応じて昇給していきますし、もちろん残業代などもキッチリ支給されます。産休・育休も取りやすいので、出産・育児を経て長く続ける保育士が多いのも特長ですね。新人保育士にとっては、ベテランが多く、指導やサポート体制がしっかりしているのも安心材料になると思います。逆に覚悟しておかないといけないのは、さっきもお話ししたように公務員試験が「狭き門」であること。特に最近は公立保育所の民営化が進み、例えば大阪市ではここ5年ほどの間に今福南保育所(城東区)、今津保育所(鶴見区)、香蓑保育所(東淀川区)、吉野保育所(福島区)などの運営が次々に民間に移管されています。今後は採用定員の削減も予想されますので、ますます「狭き門」になるかもしれません。また公立の保育士には転任もついてまわります。大阪市の保育士の雇い主は「大阪市」ですから、市内の市立保育所すべてが勤務地候補。市立の小学校の先生が数年ごとに他校に転任するのと同じですね。さらに大阪市からの辞令で、保育関係という範囲内で児童相談所などへの異動の可能性もあります。これも覚悟が必要です。
公立保育所の保育方針が市町村によって決められているのに対し、私立は各園が独自の保育方針を打ち出すことができます。だからいろんな保育方法を経験したり学んだりできますし、時代のニーズに合った保育を追求することも、自分の保育観に合う園を選ぶこともできます。また公立のように数年ごとの異動もなく、ひとつの園で長く勤めることもできますね。ただ公立に比べて給与水準は若干低め。しかも園によって給与規定や昇給基準が違いますし、中にはいまだにサービス残業が存在する園もないとはいえません。なので事前チェックや面接での確認が不可欠です。さらに体制や環境にもバラツキがあります。大規模園か小規模保育か。集団保育か担当制保育か。残業が多いのか少ないのか。担当する子どもの人数はどうか。臨時保育士のサポートはあるのか…。これらによって労働条件も大きく違ってきますので、やはり事前確認が必要ですね。「結局、公立と私立のどっちがいいの?」という質問には、残念ながら簡単にはお答えできません。それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、あとはみなさんの判断です。ただし『ほいとも』では、「私はどっちに向いてるの?」といった相談も絶賛受付中ですよ。
■監修/新谷ますみ
保育園運営本部で勤務。短大の幼児教育学科を卒業し、保育士・幼稚園教諭資格を取得。結婚後も仕事を続け、出産を機に一度退職。子育てがひと段落して、職場復帰。大切にしている言葉は「失敗しても、じっくり待つ」。

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