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2024.11.20

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保育園での子どもの噛みつき問題、なぜ起こるのか? どう対処すればいいのか?

保育園での子どもの噛みつき問題、なぜ起こるのか? どう対処すればいいのか?

「ゆうきくんが、はるとくんを噛んだ!」 どの保育園でも日常的に起こる事件ですね。噛むというのは子どもの成長段階で必ず通る道。「噛んじゃダメ!」と叱っておさまるなら話は早いんですが、そうはいきませんね。もちろん人を噛むのはいいことではありませんが、噛むのは本能的な行動で、悪気がないことがほとんど。理由をしっかり理解しておけば、対処方法も見えてきます。

(1)口を使った探索行動
子どもは「上から下へ育つ」といわれます。足より手が先に、手より口が先に発達するんです。だから手で確かめるより、口で確かめる=噛みつくという時期が必ずあります。
(2)歯茎かむずがゆい
生後6ヵ月頃から乳歯が生え始めます。この時期、歯茎がむずがゆくなり、物を噛むことでそれを紛らわせようとします。
(3)感情や欲求の表現
1〜2歳になると自我が芽生え、「いやだ!」「こうしたい!」という感情や欲求が出てきます。でもまだ言語能力が未発達で、ことばを使わず気持ちを伝えようと噛みつくことがあります。
(4)関わり方がわからない
お友だちと一緒に遊びたい。仲良くなりたい。でもどう関わればいいか分からない。そんな時に噛みつくという行動に出ることがあります。これは一種の挨拶や愛情表現だといわれます。
(5)甘えたい気持ちの表現
親に自分のことを見てほしい、かまってほしいという時にも噛むことがあります。親が痛がる反応を「自分を見てくれている」と取り違えると、対象が親の他にまで広がることも…。
(6)環境の変化による不安
家庭でも引越し直後や、お母さんが妊娠した際に、噛むようになったという話をよく聞きます。保育園でもクラス替え、担任の交代といった変化で急に噛みつきが増えることもあるようです。
(7)ストレスや競争意識
ある保育士さんから「クラスの人数が多すぎると噛みつきが増える」と聞いたことがあります。窮屈状態によるストレス、「早くしないとおもちゃを取られる」といった競争意識が原因です。
(8)攻撃の手段として
ケンカになると、叩いたり、蹴ったり、ひっかいたり。子ども同士、いろんな攻撃を繰り出します。その一つが噛みつき。それで相手に勝つ経験をすると癖になることもあるようです。
例えば(1)(2)では、噛むこと自体をやめさせるのは困難です。ただ対象が人に向かないように、歯固め用の「かんでもいいおもちゃ」を用意することはできますね。
(3)(4)(5)では、保育士が感情表現をサポートするという方法があります。まずは「イヤだ」「ほしい」「ねむい」「おなかすいた」「いっしょにあそびたい」といった気持ちをことばで伝えるように促す。ことばでの表現が難しい年次では、絵カードやジェスチャーで表現の練習をする。また噛みつく前兆を感じたら「どうしたの?」と声をかけ、「○○がイヤだったのね」「○○したかったのね」と気持ちを代弁してあげるのも大事です。
(6)は家庭との協力が必要ですが、(7)は園内の環境や活動が刺激的だったり、ストレスの原因だったりすることがあります。どんな場面で噛みつくかを観察し、そうした状況を避ける工夫をすれば解決することもあります。例えば静かに過ごせるスペースをつくる、死角ができないように部屋の四隅に先生を配置して見守る、体を動かす時間・落ち着ける時間のバランスを考えて1日の流れを見直す、という具合です。
これは(8)だけではありませんが、噛み癖のある子には「噛んではいけない」というメッセージを送り続けることも大切。「噛むと痛んだよ」「お友だち、痛がってるよ」とやさしく諭すように伝えましょう。噛みつきが起こってしまった時は、まずは噛まれた子のケアが最優先です。流水で洗って冷やす。必要なら消毒や絆創膏。そのうえで噛んだ子への対応です。「噛むのはやめようね」だけでなく、「今度は○○しようね」「次は先に先生に話してね」といった具体的な声かけが有効です。
入園説明会や保護者会などで、成長過程において噛みつき行動があることを予め伝えておくと、理解も得やすいと思います。また家庭と保育園で一貫した対応をすることで、子どももルールを学びやすくなります。噛みつきが頻繁に見られる場合は、家でもジェスチャーで練習する、子どもの気持ちを代弁するといった対応をしてもらえるよう協力を仰ぎましょう。
噛みつき事案が発生した際には「うちの息子が噛まれたって」「娘がケガをさせられた」とクレームになる前に、先に報告することが大事です。場合によっては園として防げなかったことを謝罪することも必要。加えて噛みつきが起きた原因や、そのときの様子も詳しく伝えるようにしましょう。ただ噛んだ子どもの名前は明かさないという方針の園が多いです。
もしみなさんの園で「こんな対策をしている」「こんな工夫で噛みつきが減った」ということがあれば、ぜひ『ほいとも』にも教えてくださいね。たくさん情報が集まれば、また発信していきたいと思います。
■監修/新谷ますみ
保育園運営本部で勤務。短大の幼児教育学科を卒業し、保育士・幼稚園教諭資格を取得。結婚後も仕事を続け、出産を機に一度退職。子育てがひと段落して、職場復帰。大切にしている言葉は「失敗しても、じっくり待つ」。

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